さんゆうねっと

お手伝いハルコの食の森羅万象

長年食を多面的に観察してきた後藤晴彦(お手伝いハルコ)が、食文化の現在過去未来を考察します。

四月の魚は食べない!?

4月1日は「エイプリル・フール」ですが、私はこの日だけは「ウソ」をつかない、と、毎年ウソをついているのです。

ご存知の方も多いと思いますが、このエイプリル・フールの起源はフランスだと言われています。手元の『読む辞典フランス』(三省堂)の年間行事の4月の項によると、「4月1日のエイプリル・フールは、フランス語で“Poisson d'avril(ポワッソンダヴリル)=4月の魚”と呼ばれている。由来には諸説あるが、1564年に国王シャルル9世が1月1日を新年とする勅令を出した。それまでは4月1日が新年で、その時に新年の贈物を交換する習慣があったので、新年が1月1日になってもその習慣はなかなか改まることはなく、4月1日に見せかけの贈物を交換するようになった。それが『四月馬鹿』で、人を騙してかつぐという習慣の由来である」ということなのだとか。

このシャルル9世は、“Edit de Roussillon(ルシヨンの勅令)”で1月1日を新年に定めた国王ですが、相当鬱屈(うっくつ)した人物のようです。1月1日を新年と認めない国民が4月1日を「嘘の新年」と祝って大騒ぎを始めたので、シャルル9世はこの反発した人々を捕まえて処刑することを命じたというのです。人々はこの事件を忘れないように、シャルル9世への抗議として「嘘の新年」を盛大に祝うようになったのだとか。ちなみに、このシャルル9世の母后はフィレンツェのメディチ家からアンリ2世に嫁いだカトリーヌ・ド・メディシスで、フランス美食の基礎を築いた人なのです。虐殺の命令を出した2年後に、シャルル9世は23歳の若さで亡くなっているのですが、この説も確たる証拠はないようです。

では、何で四月の「魚」なのか!?

これも諸説があり過ぎるほどあるのです。4月から魚が産卵期に入るため、漁獲が禁止されていたのですが、漁獲期の最終日である4月1日に手ぶらで戻ってきた漁師をからかって、人々が魚を川に投げ込み、それを釣らせてあげたのが始まりだという説もありますが、どうでしょうか。


また、この四月の魚はサバ(maquereau マクロー)だと言われており、4月になると簡単に釣られて食べられてしまうサバにちなんで、4月1日にだまされる人を「四月の魚」という、まるで逆の説もあるのです。

どの説も一長一短なのですが、根底にあるのはキリスト教だと思われます。キリスト教の大迫害受難の時代、キリスト教徒である暗号として「魚のアイコン」が使われていたのです。今ではコンピュータ用語として普通に用いられているアイコンという言葉は英語で、綴りを“icon”と書きますが、これは「イコン」と呼ばれ、キリスト教において崇敬の対象とされる聖像を意味します。すなわち、シンボルの魚はキリストの暗喩(あんゆ)なのです。

そして、キリスト教のカトリックでは、伝統的に金曜日には肉を食べずに魚を食べる習慣があります。カトリックの食事の規範には「大斎(たいさい・だいさい)」と「小斎(しょうさい)」があり、大斎は四旬節(しじゅんせつ)と呼ばれる復活祭前の期間の大きな行事で、灰の水曜日(復活祭の46日前で四旬節の初日)と聖金曜日(復活祭前の金曜日)に肉食を絶って食事制限をします。小斎を守る日は祭日を除く毎週金曜日で、この日は肉類を食べない日なのです。何故金曜日かというと、キリストが磔刑にされた日と言えばお解りですね。

以前パリに滞在していた時、全然信仰心はないのですが、丁度金曜だからと好奇心から魚介専門のレストランに行ってみたことがあります。その当時、パリの魚介レストランと言えば、“Le Duc(ル・デック)”と“le Divelles(ル・デベルク)”というふたつの有名店。ル・デックは比較的大衆的で(値段は大衆的ではないが)、サン・ジャックやスズキの薄造りに魚介のフリット、ムール貝の蒸物、メインのヒラメのグリルに自分でエストラゴン入りのオリーブオイルをかけて食べるという非常にシンプルな料理。一方のル・デベルクは、大統領も通うような、入口には制服のドアマンが立っている高級レストラン。シメジのポワレやホタテの蒸物が出てきてヘルシーでしたが、ホタテが中華蒸篭で出てきたのには驚きました。とても美味しいのですが、やはり日本の魚介専門店の方が良いなぁ、と感じたものです。

日本の魚介と言えば、やはり寿司。4月の旬のネタは、やはり「サバ」ですね。美味しい〆サバが食べたい!