さんゆうねっと

日本酒 四季の旅。識の旅。

日本の歳時を映す日本酒。四季折々の移ろいと長い年月の中で培われてきた、お酒を巡るお話を。

霜月の候

霜月の名の通り、11月になると朝晩にぐっと冷え込み、霜がおりる地域も出てきます。まさに日本酒造りにはベストな時期です。

「初添(はつぞえ)」と通常呼ばれる仕込みの初日に、発酵タンクに移した酒母に、蒸米、米麹、水を加えます。この段階では、発酵タンク内の液面温度は約13~15度で、4日後ぐらいに5~6度ほどになるまで段階的に下げていきます。発酵(酵母の活動)によって生じる熱によって、そこからは徐々に温度が上がってきますが、大吟醸で10度前後、純米酒では15度ぐらいまでにコントロールされます。

内部の温度が高くなり過ぎると、酵母の動きが活発になって、どんどん発酵が進んでしまい、通常より速いスピードでアルコールを生成しますが、味わいを悪くする不要な成分も副産物として作り出してしまうのです。そのため、温度帯を管理して酵母の活動を最適化することは、非常に重要なことです。こうしたことから、外気温が高い時期ではなく、晩秋から初冬にかけて本格的な酒造りが始まりまるのです。


11月後半には、早いところでその年のお米で作った新酒が出回り始めます。そのシンボルは、ご存知の方も多いと思いますが、酒蔵の軒先に掛けられる「杉玉(すぎたま、すぎだま)」。「酒林(さかばやし)」とも呼ばれています。これは杉の葉を束ねて丸く刈り上げたもので、新酒ができた合図として酒蔵の軒先に吊るされます。初めは青々としている杉玉が、翌年の秋頃に向けて徐々に茶色く色づいていく様子は、新酒のフレッシュな味わいから、熟成された芳醇な味わいへと変化する過程を表しているとも言われています。