さんゆうねっと

お手伝いハルコの食の森羅万象

長年食を多面的に観察してきた後藤晴彦(お手伝いハルコ)が、食文化の現在過去未来を考察します。

枝豆の塩はソースと心得るべし!

枝豆を茹でて、冷たいビールで喉を潤す。シンプルですが、こんな美味しい組み合わせは他には無いと思います。枝豆は5月から10月まで半年ほど出回っていますが、やはり夏の風物詩ですね。

枝豆は居酒屋などでも定番で、ビールと一緒に突き出しでも出てきますが、たまに全然塩気が無いものに出会うことがあります。冷たくなった枝豆に塩をかけて食べてみても、塩の味しかしない。茹でるだけの単純な調理法なのに、どうやったらこんなに不味く出来るのか不思議に思いました。ちょうど雑誌で連載をしていることもあって、枝豆を記事にしてみようと思い立ったのです。和食だと当たり前なので、別の見方があるかとイタリアンのシェフにお願いし、シェフと一緒に枝豆を茹でながら考えた幾つかの事柄をまとめてみました。

大前提として、枝豆は鮮度が勝負なので、収穫したものを直ぐに茹でること。実は、私の別宅は新潟にあって、収穫したばかりの土がまだ乾いてない枝豆を茹で、その茹でたてを食べたことがあるのですが、確かに香りも良くて旨いのです。しかしながら、枝豆の畑に鍋を持って行って茹でるのは実際には難しく、現実的ではありません。ちなみに、今回取材したシェフも新潟の出身。枝豆には熟知しています。枝豆の香りや味わいは、収穫された時期や状態、種類によって変わりますが、青豆の調理法は茹でるのが一般的で、蒸したり焼いたりするとなるとまた別の料理になります。

枝豆を茹でるのに必要なものは、塩と水だけ。まずは、枝から切り落とします。子どもの頃、よく母親に新聞紙の上で枝豆を切るように命じられていたのですが、記憶の中ではさやの手前の枝の部分で切っていたように思います。枝付きで茹でる方が新鮮だという考え方もありますが、食べにくいので枝は切り落とし、水で全体の汚れを流してから塩を加え、つやがでてくるまで両手で揉むのです。人によっては、この段階でしばらく置いておくというレシピもあるのですが、あくまで汚れとつやだしなので、直ぐに水で洗い流しても良いかと。日本料理店で出てくる枝豆は、さやの両端を切っていることが多いのですが、その切り方だと塩の扱いがまた全然違ってきます。


枝豆を入れた時の急激な温度低下を防ぐため、鍋にたっぷりの水を沸騰させ、水の量に対して4%の塩を入れて茹でます。と云うことですが、個人的には枝豆自体に塩が入ってくるのがあまり好きではないので、塩を入れて茹でなくても良いと思っています。

枝豆の硬さを味見しながら茹で具合を確認し、7~8分ほど茹でたら、ザルにあけて水を切ります。さすがに冷水に取る人はいないと思いますが、十分に水気と粗熱を取って冷ますには大きめのザルがいいかもしれません。ちなみに、わが家で使っているザルは、柄付きでかなりの大きさです。左手でザルを上下させながら、右手で塩をつまんで、揺すっているザルに高めの所から魚の振り塩のように塩をするのですが、これはかなり熟練を要します。さらに、ザルの中の枝豆の中に右手を入れて軽く混ぜ合わせ、熱を取るためにザルを振ります。この時、余分な塩も下に落ちて行くのです。

和食で焼魚を焼く時には、焼く前に塩をして暫く放置し、水分を出すようにするのですが、フランス料理の場合には焼く直前に塩をします。こうすることで、魚の身と塩が同時に焼かれ、塩がソースの役割を果たします。同じ理屈で、茹でたての枝豆の塩はソースの役割。外側のさやに付いていた塩と弾かれた豆とが口の中で合わさって、いわゆる口中調味の状態になる訳です。

塩味の効き過ぎた豆は、はっきりいって旨くないし、飽きてきます。さやに塩が付いているだけなら、塩味が強いと感じた場合には中の豆だけ食べれば良いのですから、これでビールがどんどん進むのです。

枝豆は、大豆になる前の若い時期に収穫されたもの。大豆に比べてカロリーも低く、栄養素的には大豆と緑黄色野菜を合わせたような存在なので、海外でもヘルシーフード「EDAMAME」として人気が出てきました。でも、美味しくてヘルシーと言えども、ビールの飲み過ぎにはご注意してくださいね。